大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和31(オ)53 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人藤原一嘉の上告理由第一点及び第二点について。

原判決は、上告会社は判示代金減額分返還のため本件約束手形を訴外D興産株式

会社に宛て受取人欄を白地にしたまま振出したところ、元来、同訴外会社は被上告

会社外二会社が訴外E鉱業株式会社に対する負債消却を主目的として設立されたも

のであるため、右D興産株式会社は右消却と本件手形現金化の便宜上、本件手形の

受取人を被上告会社と補充した上これを同会社に交付した事実を認定して本件手形

が原因関係を欠くものであるとの主張を排斥し、更に本件手形が詐欺によつて振出

されたとの事実は挙示の証拠によつては肯認できない旨判示したこと判文上明白で

ある。従つて、被上告会社が本件手形を上告会社から直接振出を受けて取得したこ

とその他の事実を主張する論旨は、原審の事実認定と異る事実を主張し若くはこれ

を前提とするもので、結局認定非難に帰し採用できない。

同第三点について。

原判決認定事実によれば、清算中の被上告会社は、そのE鉱業株式会社に対する

債務弁済消却のためそれを主目的として設立されたD興産株式会社が判示減額分返

還のため受取人欄白地のまま上告会社から振出を受けた本件手形を、受取人被上告

会社と補充の上交付を受けたという関係であるから、右手形取得行為が被上告会社

の清算の目的の範囲内の行為であることは明らかであり、従つて本件手形が上告会

社とD興産株式会社との間の売買に関して振出され、手形上は振出人及び受取人と

してそれぞれ上告会社と被上告会社とが表示されているのも当然であるといえる。

原判決には所論の違法はなく、論旨は理由がない。

- 1 -

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 垂 水 克 己

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!